玉掛索取扱説明書

(1) 玉掛索には必ずロープ加工技能士(国家検定)の製作したものを使用すること。
(2) 玉掛作業は必ず玉掛作業の有資格者(玉掛作業の技能講習を終了した者)が行うこと。
(3) 玉掛作業は関連労働法規(クレーン等安全規則、労働安全衛生規則など)を守って作業すること。
(4) ロープや玉掛索を取扱うときは、必ず安全靴安全ヘルメットを着用し、絶対に素手では扱わないこと。
(ロープが反発して「はね」たり、玉掛索の「ひげ」や「端末」で手、指、足などを怪我する恐れがある。)
(5) 玉掛索の梱包を解く場合は結束材(シージングワイヤやバンド線、バインダーなど)で止めてある場合があるので、手などを怪我しないよう注意のこと。
(6) 下図のように丸められたロープを解くときは、ロープが反発して「はね」るので、「ひげ」「端末」に注意して取扱うこと。
丸められたロープを解くとき
(7) 資材置場や倉庫からロープを玉掛作業現場に運搬するときは、着衣にワイヤを引っ掛けたり、ロープグリースで着衣を汚さないように注意すること。
(8) 台付索は絶対に玉掛作業に使用しないこと。(法規どうり作られていない。)
(9) 玉掛索は玉掛作業当日の作業前に必ず異常の有無を点検すること。
(10) 点検の結果廃棄基準に達しているものは絶対に使用しないこと。また疑わしいものは監督者の指示を仰ぐこと。

廃棄基準

点検項目
廃棄基準
断線
素線がロープ1よりの間において最外層ストランド中の総素線数の10%以上断線しているもの
ロープ5よりの間において20%以上断線しているもの
磨耗
磨耗によって直径の減少が公称径の7%を超えるもの
腐食
腐食によって素線表面にピッチングが発生してあばた状になったもの
内部腐食によって素線が緩んだもの
形崩れ
形崩れによってキンク及び著しい扁平化,曲がり,かご状などの欠陥が生じたもの
電弧又は熱影響
テンパーカラー(素線表面に高温度のため色が着いたもの)又は溶損の認められるもの
塗油の状態
ロープグリースが流出して「かさかさ」になっているもの
アイ部・圧縮止部
き烈,変形,ロープの「ずれ」又は著しい「きず」などが発生しているもの
(11) 使用する玉掛索はその安全荷重(吊り方によって異なる)を確認して、必要な太さ(ロープ径)と長さのものを選定すること。
(12) 玉掛索は必ず6以上の安全率(吊り荷の重さの6倍以上の強度のもの)で使用すること。
(13) 吊り角度はなるべく60度以内で使用すること。(角度が大きくなると大きな張力が掛かる。)
吊り角度(θ)による張力と必要なロープの強さ
2本吊りの場合
吊り角度(θ)
0度
30度
60度
1本のロープに掛かる張力
吊り荷の重さの
0.5倍
吊り荷の重さの
0.52倍
吊り荷の重さの
0.58倍
必要な1本のロープの強さ
吊り荷の重さの
3倍以上
吊り荷の重さの
3.12倍以上
吊り荷の重さの
3.48倍以上

(注)吊り本数と吊り角度及び吊り方による実際の安全荷重は、全日本ロープ加工組合連合会発行のワイヤロープ安全荷重表(早見表)があります。


1本吊りでは使用しないこと

(14) 玉掛索は1本吊りでは使用しないこと。(クレーンのフックや吊り荷が回転したり、ロープの「より」が戻って、玉掛索 の強度が落ちたり、編み込み部分が抜けたりして極めて危険。)

絞り吊り

(15) 絞り吊り(チョーク吊り)の場合の強度低下に注意すること。 [※矢印の部分で強度が30%程度落ちる]

(16) エンドレス索を玉掛索として使用する場合は、フック部での強度低下に注意すること。 [※矢印の部分で強度が30%程度落ちる]
金具(リンクなど)付きの玉掛索

(17) 金具(リンクなど)付きの玉掛索を使用する場合は、指や手を挟まないように注意すること。

(18) 玉掛索のアイ部の開き角度は60度以内で使用すること。(手加工品の場合は抜けやすくなり、圧縮加工品の場合はスリープが開いて締結効率が落ちて危険。)
玉掛索のアイ部
(19) 玉掛索のアイスプライス部(手加工品の編み終わり部や圧縮加工品の締結金具端末部)には、強度確保のためにワイヤの「ひげ」(ワイヤの加工端末)やロープの「端末」が出ているので、絶対に素手で扱わないこと。(指や手のひらを怪我するので危険。)
玉掛索のアイスプライス部
(20) 玉掛索で吊り荷を吊り上げる際には、吊り上げ部分(クレーンのフックやハッカなど)が吊り荷の重心の真上になるようにして吊り上げること。(斜め吊りするとロープが「ずれ」て危険。)
(21) 玉掛索に「もつれ」があれば、直してから荷を吊り上げること。
(22) 多本吊りする場合は、それぞれの玉掛索に均等な張力が掛かるようにすること。
(23) 玉掛作業中は玉掛索にショック(「ばら物」などの荷崩れなどによる)を与えないようにすること。
(24) 玉掛索は吊り荷のエッジに直接当たらないように適当な「当て物」をすること。(ロープの強度が落ちる。)
当て物
玉掛索の圧縮止め部

(25) 玉掛索の圧縮止め部は、絶対に吊り荷のエッジ(角)に直接当てないようにすること。(加工部の締結強度が低下する。)

(26) 吊り上げの開始時は、吊り荷の安定を確かめながら地切りし静かに上げること。(急激に吊り上げるとロープにショックが掛かる。)
(27) 荷の吊り上げ中に溶接などを行わないこと。(溶接時の火花でロープを傷める恐れがある。)
(28) 玉掛索で吊り荷を降ろす際には、床面から50cm位の位置で一旦吊り降ろしを停止し、静かに(インチングしながら)注意して接地すること。
玉掛索を荷から引抜くときは

(29) 玉掛索を荷から引抜くときは、無理をしないで抜くこと。(吊り荷を傷めたり、ロープに「くせ」が付いて、ロープを傷めることがある。)

(30) 玉掛索は100度以上の高温や腐食性雰囲気(酸・アルカリ)で使用しないこと。
(31) アルミ合金で端末加工した玉掛索は、海水中では使用しないこと。(アルミ合金が溶け出して締結力が落ちてくるので危険。)
(32) 玉掛索にはロープグリースが塗ってあるので、着衣が汚れないように注意すること。

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